最後のパネルディスカッションでは、先程の成果発表の登壇者でディスカッションを行いました。
<登壇者>
DX実践道場参加事業者① 株式会社カワミツ 河野泰樹 氏
DX実践道場参加事業者② シンワ株式会社 太原真弘 氏
DX実践道場参加事業者③ 有限会社備後レポート社 二宮恵 氏
広島県知事 湯﨑英彦
<ファシリテーター>
株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所 荒瀬光宏 氏
パネルディスカッションでは、「DXを推進する上での苦労点とそれを乗り越える方法について」と「自社の将来像を実現するためのDX実践の方向性について」という2つのテーマで議論しました。
【テーマ1】「DXを推進する上での苦労点とそれを乗り越える方法について」
「社内へのDX浸透の課題」
河野氏からは、「DXを推進する上での問題としてよく挙げられる「社内のDXの取組に対する理解」については、お客様からの信頼獲得や社員が保有するスキルの定着・継承など、事業の精度を向上させるためにDXが必要であることを、社員が納得できる内容で説得していくことが重要」という指摘がありました。
太原氏からは、「当初はDXの情報を集めることに集中するあまりDXで解決すべき課題が不明確になっていたところ、DX実践道場の伴走支援が大きな助けとなり、社内の課題を明確にできたことで社内の同意を得られた」と言及されました。
二宮氏からは、「単にシステムを導入するだけではなく、どのように活用できるか、どこまで使い込めるかといった課題を設定し、限られた予算と人材の範囲内で解決できれば事業のさらなる発展につながる」という意見がでました。
荒瀬氏からは、社内のDXの理解定着には「部分最適ではなく目指すビジョンを共有して全体最適を志向すること」「DXを目的と捉えず手段と位置付けること」「DXを推進する上での問題点はひとつずつ丁寧に検証して懸念払拭に努めること」が重要とのまとめがありました。
「予算配分・算出と導入システムの課題」
太原氏からは、「業務効率化を予算内で実現するために、DX実践道場の伴走支援を活用し、課題を見える化して、いきなり全てに対処するのではなく、部分的に対処することで予算面をクリアした」と説明がありました。
二宮氏も、太原氏と同様に「DX実践道場の伴走支援が強い味方となり、システム導入の優先順位や採算性の検討に対し助言を得ることで、自社の業務内容に則した必要かつ十分なシステム導入を実現できた」とのことでした。
荒瀬氏からは、「以前は嵩みがちだったシステム化投資も近年は技術イノベーションにより、簡単に試せるツールが増えてきており、ハードルが下がっているので積極的に活用してほしい」との補足がありました。
「DX人材の課題」
DX人材の育成や確保が課題にあがる中、太原氏からは「経営者の率先垂範のスキルアップ姿勢と諦めずに続けることの重要性」、二宮氏からは「DX実践道場の伴走支援を引き合いに、外部人材の協力でDX推進の糸口を導き出すこと、社内のDX推進チーム発足の重要性」、そして河野氏からは「社員のチャレンジ意欲を刺激して本人の達成感やメンタルヘルスの面で好循環をつくることの重要性」についてそれぞれ意見がありました。
荒瀬氏からは、「外部の協力を得ること」、併せて「社内で人材強化に努めること」の両面が重要というまとめがありました。
以上、一連の課題についてのディスカッションを通じ、DX実践道場参加事業者の3名の方には、DXに取り組む様々な契機があり、それぞれの抱える課題に真摯に向き合い、DX実践道場の伴走支援など外部のサポートも得つつヒントを見つけ突破口を切り拓いてこられたのが印象的でした。
湯崎広島県知事からは、DX実践道場参加事業者の共通項として「経営者がDX推進を決意すること」「無理せずできるところから着手すること」「それぞれの会社に合った最適解を見つけること」と言及がありました。そして「DXの取組をワンサイクル回すことにより人材が育ちさらにその次のステップへ進める。次のステップに取り組む『決意』は経営者でないとできない。経営者自身がやらなければいけないと『決意』することが大切」と参加された方々へ強い期待を示しました。
【テーマ2】「自社の将来像を実現するためのDX実践の方向性について」
二宮氏からは、「OCRによる文字認識や人工知能AIを使いこなせる人材を増やすなどしてさらに業務を効率化し、手間がかかる作業に取られていた時間を、リアルに会いたい人と出会うなど「アナログ」の時間に振り向けそこからまたDXにつなげたい」との抱負が語られました。
太原氏からは、「従来のルーティーン作業から解放して時間をより創出し、「雑談」から生まれる新商品の開発など今後のサービス創出に充当する時間を増やしたい」との指摘がありました。
河野氏からは、「時間の創出に加え、新たな発想で新たなものを生産し、事業の精度を上げることで社員の意欲向上や企業風土の変革につなげていきたい」との強い決意が示されました。
河野氏のコメントに呼応するように、太原氏からは「社内のDXチームの発足」、二宮氏からは「勤怠管理ツール導入により働き方改革の実現につながった」といった意見がありました。
荒瀬氏からは、「各社がそれぞれ方向性を定めてDXを実践しつつも、顧客の課題を解決する、業務を改善するなど、人にしかできない業務に時間とリソースをシフトさせることが重要で、人の豊かな暮らしを実現するための手段としてDXを捉える。それぞれの組織の状況にあわせ、無理せず段階的なDXを進め、かつ変革をつづけることが重要、新しいデジタルサービスの提供にあたっては、市場の考え方自体も変えていくことも時に必要である」との指摘がありました。
最後に、湯﨑広島県知事からは、「生産性を向上させるスパイラルを回し続けることの重要性を経営者が強く認識し、まず分母のコスト削減で生産性を上げ次に分子の売上を上げるサイクルを、企業規模の大小に関わらずそれぞれの歩みに応じてファーストステップ、セカンドステップ、サードステップと進めていただきたい」と期待を込めた結びの一言があり、ディスカッションを締め括りました。